あなたへの月
「桐山くんは、生きてね」
そう言って、笑って。
「私ね、桐山くんのこと、大好きだよ」
涙を、流して。
は、死んだ。
ひどくあっけない気がした。
血塗れの
の頬に触れた。
こめかみが疼いた。
二日目の、夜の事。
月がやけに明るい日だった。
このゲームが始まってから、俺は
とずっと一緒にいた。
待ち合わせをした訳でもない。
偶然、出会って。
その時既に俺は何人もの生徒を殺していて。
返り血をたくさん浴びていたけれど。
は俺を怖がらなかった。
ただ、ひどく安心した様な顔をして。
「一緒に行ってもいい?」と聞いた。
俺は頷いた。
そうして、
を抱きしめた。
は驚いていたが、
何となく、そうしてみたいと思った。
「私ね、桐山くんのこと好きなの」
修学旅行に行く数日前の事だったと思う。
は俺に、そう言った。
俺は、「好き」という気持ちがどんなものなのかわからなかった。
その事を、
に伝えると、
は少し悲しそうな顔をして、
「じゃあ、いつかそれがわかった時にでも、また考えてくれないかな?」
そう言った。
俺はまた頷いた。
。
俺はまだ、わからない。
わからないのに、
は死んでしまった。
ただ、
伝えたい事が、あった。
といる時、
何だか悪くない気持ちになった。
胸が温かくなるような、
心が落ち着くような、
そんな気持ち。
そんな気持ちを感じたのは、初めてだった。
もう少し早く、伝えておけばよかったのかな。
を抱き起こした。
胸に耳を当てた。
昨日、抱きしめた時には聞こえていた鼓動が、
今日は、聞こえない。
当然だ。
は、死んだのだから。
月明かりに照らされた、青白い
はもう動かない。
俺が殺した生徒たちと同じ様に。
動かない死体に意味など無い。
そう思っていた。
の身体を、そっと下ろした。
その
の身体に、上着をかけた。
そうしてみようと、思った。
どうしてかはわからないが。
そうしてみようと、思った。
の亡骸に背を向けて、俺は歩き出した。
は俺に、「生きろ」と言った。
別に、生き残る事に興味はない。
自分の命など、どうでもよかったのだが。
が、それを望むのなら。
そうしてみるのも、悪くないと思った。
それだけの事だ。
だが、
生き残っても、
はもういない。
もう、
は俺を「好きだ」と言ってくれない。
。
がいなかったら、
俺は「好き」という気持ちが何なのかわからないままだ。
きっと、もうわかる事はないだろう。
そんな気が、するんだ。
残った生徒はもう何人もいない。
その中には、
を殺した者も含まれているのだろう。
俺が他のやつと戦っている間に、
武器を持たない
を、撃ち殺した者が。
そいつを殺せれば、それでいい。
そう俺は思った。
生きて帰っても、
がいないのなら、意味が無い。
だからきっと。
今日、俺も死ぬことになるのだろう。
どうでもよかった。
誰が生きようが死のうが、どうでもよかった。
ただ、
が死んだ時は、
どうでもいいとは、思わなかった。
きっと、
に対してだけ、そう思った。
どうしてなのかな。
右手を、見た。
さっき
に触れた手。
真っ赤に血で染まっている。
の、流した血が。
こめかみが、ひどくうずいて。
胸が苦しくなった。
。
もし、また会える事があったら。
この気持ちが何なのか、教えてくれないか?
―
。
きっと、俺も。
すぐに逝くだろうから。
俺は歩き出した。
もう、振り返らなかった。
おわり
後書き:久しぶりに桐山一人称で書いたのですが、
見事に偽ですみません。
桐山は主人公の事、好きだったんですね。
でも自分ではわからなかったんです。
主人公が死んでしまったあとは、もう誰も桐山の気持ちを知ることはない。
この後最終決戦で桐山、死にます(汗)。
救いのない話でごめんなさい。
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