「信史、何かあったの?」
「うーん、別に?」
ここは俺の彼女、
の部屋。
俺は普段と変わらないようなつもりでいたのに、
にはそんな俺の誤魔化しが通じないらしい。参ったな。
「何か…いつもと違うし。唇、切れてたし。喧嘩でもした?」
「まあ、似たようなもんかな」
True Love
俺は昨日の出来事を思い出す。
自分では、気にしてないつもりだったけど。
―意外と、尾を引くもんなんだな。
啓太のあの、わざとらしい、いかにもつくったへらへらした笑顔を
思い出すと、気分が悪くなる。
いや、ひょっとすると、そんな奴を友達だと信じてた自分に腹が
立っていたのかもしれない。
だから、今日俺は少しぴりぴりしていて、
にも冷たくあたってしまっていた
かもしれない。ああ、クールじゃないな、俺。
「ねえ、私に話せることだったら話して?」
は心底俺を心配しているようだった。
俺は少し胸が痛む。
と付き合いだしたのは四ヶ月前。
同じクラスだった
が、俺の部活の帰りに告白してきたのがきっかけ。
はとびきり美人という訳では無かったけど、まあそれなりに可愛い
顔をしていたし、何度か話して、嫌な感じはしていなかったから、
俺はあっさりオーケーした。
どうせ、すぐ別れるだろうから。
それから
と俺はごく普通に付き合って、俺の付き合った期間では
最長記録の四ヶ月を更新した。
これには俺自身ちょっと驚いている。
「別に、
が心配する程のことじゃねえよ。」
「…そう」
出来るだけ俺は明るく言ったつもりだったけど、
は悲しそうな顔をして
俺から目をそらした。
俺は、この顔に弱いんだ。
今まで付き合ってきた女は楽だった。
みんな俺の顔だとか、バスケが出来るからとかで近寄ってきたような
奴らばっかりだったから。
大勢居る同じような女達の中から、顔のいい奴だけ選んで、付き合ってた。
「愛してる」なんてこれっぽっちも感じなかった。
だから別れる時にも、罪悪感を感じずに済んだ。
叔父さんも、そんな俺を苦笑いして見てたっけな。
でも、
はいつもの女達と違うことに気付いた。
他の女が、「私、三村信史と付き合ってるの」と言いふらしていた
のとは違って、
は学校で俺と一緒にいることさえ恥ずかしがるような
女だった。
最初だって、俺のこと「三村君」て呼んでて。
俺が「俺たち付き合ってるんだからさ、信史でいいよ」
って言ったら、顔を真っ赤にして、「信史…」って
小さな声で呼んだ。
何か、調子狂うんだよな。
だけど、なぜか
といると居心地がいいんだ。
「ねえ、信史、今度の日曜空いてる?映画の割引券もらったから、
一緒に見に行かない?」
は、俺を誘うときいつも不安そうな顔する。
断られるのが怖いんだろう。
だから、俺は―
「ああ、空いてるよ。一緒に行こうな!」
たとえどんなに疲れてても、映画を見る気分じゃなくても、
オーケーしちまうんだ。
そうすると、
は、
「ほんと?よかった!楽しみー!」
裏表の無い笑顔で、思い切り喜ぶ。
啓太のあの、つくりものの笑顔とは全く違う。
そう思ったら、なんだか嬉しくなってきた。
俺は今まで、本気で付き合ったことがなかった。
もしかすると、本気になった時、裏切られるのが
怖かったのかも知れない。
―啓太に裏切られたのと同じように。
けど、
は違う。
はきっと、絶対に俺を裏切らない。
「俺って…愛されてるよな。」
「え?何か言った?」
そう言って俺の方を見た
に、俺は不意打ちのように
キスをした。
ディ―プじゃなくて、ただ触れるだけのキス。
「信史…」
は顔を真っ赤にして俺を見つめる。
おいおい、付き合ってもう何回目のキスだよ?いいかげん慣れろよ。
でも、この初々しいところが好きだ。
「
、俺のこと好き?」
「え…何…突然。」
「なあ、好きか?」
は俺を見て、顔を真っ赤にしたまま言った。
「うん。…大好き。」
「俺も、
のこと、大好きだよ。」
そういうと
は凄く嬉しそうな顔をした。
俺はそんな
が可愛くて、もういちどキスをした。
こういうのって、いいよな。
叔父さん、今度は俺、本気の恋が出来るかもしれない。
おわり
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