羽根

崩れ落ちた、桐山くん。
あたしが撃った最初で最後の銃弾で。

桐山くんは、倒れる直前に。
最後に、あたしを見た。

それはきっと見間違いなんかじゃなく。
桐山くんは、あたしを見ていた。

いつものとても冷たい目で。

あの目。
あの時の桐山くんの目。

忘れられない。

忘れたく、ないの。

―逝かないで。

どうしてかな。
桐山くんを撃ったのは、あたしなのに。
倒れた桐山くんを見た時、

そう、思ったの。

あなたを殺したのはあたし。
あなたを殺さなければ。
あなたはきっと。

あたしたちを、殺してた。
そう、思って居た。


あなたはきっと、何も感じないまま。
いつも通りの冷たい目で。
あたしを殺すのだと。

そう、思っていたの。

でも、あたし、知ってたよ?

あなたが、ただ怖いだけの人じゃなかった事。

ふとしたはずみに、とても寂しそうな目をしていた事。

最後に、あなたがあたしを見た時も。

そんな目を、してたね。

―何がそんなに、寂しかったの?

川田くんが言っていた事は。
大体当たっていて。

少しだけ、違っていた。
きっと。

桐山くんは、選ぶだけだったはず。

選ぶだけ。

楽しくもつまらなくもなく。

嬉しくも悲しくもなく。

何が正しいのか間違っているのかもわからないまま。
ただ、選んで。

何の基準もなく選んで。
そうやってただ生きて来たのだとしたら。


あなたが「死ぬ事」を選んだとしたって少しも不思議じゃない。
でも、どうして?

どうしてあたしを選んだの?

どうしてあたしなんかを選んだの?
どうして、あたしなんかに殺されたの?

避ける事も簡単だったはず。
あたしなんか、一撃で殺せたはず。
だって、あんなにたくさん、撃たれていて。

それでも生きて、追って来たのだから。

あたしたちを殺そうとして。

どうして?

桐山くんを殺した事。
あの一瞬は、ただ怖くて。

川田くんが桐山くんを撃った後も。
ただ、とても、とても、怖くて。

桐山くんが死んでしまった事、
信じたくなくて。


凄く勝手だけど。
もう少し、話したかったな。

桐山くんが、どうして寂しかったのか。
聞きたかったな。

そう、思った。
もう二度と話せなくなってしまったなんて。

信じたく、なかった。

もう少し、話したかった。


桐山くんはあたしに殺された。
きっとそれは、桐山くんが望んだ事。
桐山くんは、あたしに殺される事を選んだ。

理由はわからないけど。

桐山くんが、そう望んだのなら。
あたしは、覚えてるよ。

桐山くんを殺した事。

あたしに殺された、桐山くんの事。

全部、覚えてるから。

桐山くんを、忘れないから。
やっぱり何度でも。

あの時の桐山くんを、思い出すから。

だから、せめて。


終わった後には。


もう、そんなに寂しい目をしないで済むように、なるといいね。



おわり