少年が一人居た。
普通の人がどうやっても持つ事の出来ないものを持ち。
普通の人が当たり前の様に持っているものを持っていなかった少年が。
少年は自分が持っていないものが欲しかった。
それは与えられなければ手に入れる事の出来ないもの。
少年の周りにはそれを与えてくれる人は誰もいなかった。
少年はそれを得る事が出来ないまま大きくなった。
やがて。
少年は普通の人が当たり前の様に持っているものを、より多く持っている少女に出会った。
少年はそんな少女に興味を抱いた。
そして、期待した。
この人なら、自分が求めているものを与えてくれるかも知れないと。
けれど。
少女は。
少年ほどではないけれど、やはり普通の人が持つ事のできないものを持っている少年に、恋をしていた。
ありあまる、普通の人が持っている「愛情」を、その少年一人のために注いでいて。
少年にはそれを与える事ができなかった。
少年は、欲しかったものを手に入れる事を、諦めた。
足りないまま生まれて。
足りないまま育った少年は。
足りないまま終わる事を、選んだ。
自分に足りないものを持っていた、少女に。
憧れに近いものを抱きながら。
少年は少女が、自分を終わらせる事を望んだ。
足りなかった少年は。
最後に。
自分に足りなかったものを、足りている少女に与えた。
戻
|
|