失ったものはもう二度と帰らない

和雄は死んだ。


永久に戻らない存在として。
小さな骨壷に収まった和雄の最期の生きたあかしを、私は部下に命じて「城岩町の郊外の墓に入れておけ」とだけ言った。

じっと、和雄の視線が私に注がれているような気がして、飛び起きた夜も数度あった。
薄気味悪いというわけではなかった。ただただ、恐ろしかった。和雄は私に従順に従い、今まで生きてきた。人に言えないような恐ろしい仕打ちを、私はあの子に対して何度も何度もしてきた。あの子が私を怨んでいてもしかたない。

和雄はプログラムに巻き込まれようが、必ず私のもとに帰ってくる。そう信じて疑わなかった私の期待をあいつは裏切った。

母親似の美しい顔は、私を苦しめた。

二度と戻らない母子の霊は、今どこでどうしているだろう。…

死後の世界など信じない。私はそう公言して憚らなかったが、本当は、信じていた。
あの子の魂に、少しでも安らぎが訪れることを願った。

城岩郊外に一つしかないその墓地には、あの子の母親の墓もあるのだ。





和雄がいなくなった後の養子は、東京から迎えよう。
和雄以上に優秀な子どもは存在しないだろうが。…もう私が情熱を傾けて育てるような子は現れないだろうが。



おわり

 2008年4月29日